界隈は商業地区のはずれのお寺の点在する地域。大通りから少し入った建てこんだ住宅街で、落ち着いた雰囲気だった。前面道路は5.3m、南側接道。敷地は間口4.9m、奥行10.5mで北側にコブ付の南北に長い形状。この間口にめいっぱい建物を広げるとして、建物は2.5間(4.5m)の幅がとれる計算になる。この敷地の場合、東西隣地側はほぼ余地はないが前面道路側に加え、裏手の北側にも余地・抜けがあった。二階の床を割り、南北の床レベルをずらすことで、明るい二階の光を一階まで届けるようにした。スキップフロアにすることで、廊下と階段を兼ねることができ、動線に使う面積が少なくて済む。階段の吹き抜けを通して建物全体をほぼワンルームにし、個室は必要な時に区切るよう建具をつけた。階段は蹴込のない形状とし、階段の吹きぬけを通して、下階から風がぬけていく。現代美術に携わるご夫妻のため、大きな本棚と美術作品を飾る巨大な壁(東外壁面)を用意し、途切れさせず見せることで、床面積の小さな空間をダイナミックに見せるよう試みた。敷地唯一の目の抜けになる北空を動線の先に見えるよう配置することで、都会で最も手軽に感じられる自然である空をとりいれる仕掛けとしている。道路沿いの二階テラスは広めにとり、植物を育て、太陽を感じる場所とした。その分、居間は狭くなるが、窓を全開放すると、テラスと一体となり床が広がる。テラスの腰壁は数少ない窓の一つである南窓が閉鎖的にならないよう低めに設定しているが、道行く人からの宅内への目線を遮る役割を果たしている。半階上がった一階北側の部屋は明るくなり、床下に収納庫ができた。
〇建築データ
設計監理/烏野建築設計室
構造/ライン設計室
施工/サクジ工務店
植栽/桜花園
所在地/京都府
主要用途/専用住宅
家族構成/夫婦+子供1人
竣工年/2016年
規模/地上2階
敷地面積/52.95㎡
建築面積/40.95㎡
建蔽率77.34%
(許容 80 %)
延床面積/77.47㎡
容積率146.31%
(許容300 %)
構造/木造在来工法
耐震等級2
主な外部仕上げ/
屋根-塗装ガルバリウム鋼板
たてハゼ葺き
外壁-モルタル下地デュッセル塗
金属サイディング
建具-アルミサッシ
木製建具
主な内部仕上げ/
天井-エマルジョンペイント塗装
壁 -エマルジョンペイント塗装
床 -カラマツフローリング
オイルフィニッシュ
写真:笹の倉舎/笹倉洋平
*田中和人
建主がご用意下さったコンセプトブックにいくつかのキーワードが示されていました。
キーワード
その他、目標竣工時期と予算組が示されていました。
建主の判断で平面計画に係る大きな内容としては、
というものがありました。
お仕事上、街中で土地を探されていたこともあり、
車がなくても暮らせる便利なところに住むのだからということで、
広い面積が必要となる駐車スペースは切り捨てるという判断に至っていました。
建主の特徴としては、
(設計段階初期にお手持ちの家具の採寸も兼ねて、
建主の生活や趣味を知るため、ご自宅へお邪魔させていただきます。)
京都市内はうなぎの寝床で有名なように、間口が狭く、奥行の長い土地が多くある。
そして、そこに建つ家は隣地境界線ぎりぎりまで幅を広げても間口2間半(4.5m)又は、2間幅という家も。
また、両サイドの隣地側はほぼ窓がとれない、とったとしても採光は期待できず、通風用。
長細い立体をさらに小分けにしたプランの圧迫感と暗さを何とかしたいと考えていた。
そこで普及型の住宅として以下を想定した。
核家族で暮らす設定で、ファミリータイプのマンションくらいの20坪ほどに加え、
上下階の移動のため2坪ほど階段面積を見込み、目指すは最小限の延床面積の22~25坪。
これは京都仕様で考えていたことと、複雑な形はコストがかかりやすいので
間口に沿って建てる長方形の平面で屋根は切妻。
(市内は景観条例で切妻や寄棟など伝統的な日本の屋根形状が求められている地域が多くあります。)
町屋街を歩いていても圧迫感が少ないのは、前面道路が広くなくてもある程度軒が低いから。
この道路と建物の軒の関係の斜線を守る、平入(軒側から入る)とする。
→BLOG スキップ町家ができるまで