烏野 良子 うの りょうこ

 

一級建築士 第338665号

日本建築家協会正会員

京都建築士会

木造施設協議会

 

1982  大阪生まれ

2000  大阪府立泉陽高等学校 卒業

2004  京都造形芸術大学芸術学部環境デザイン学科 卒業

2004  横内敏人建築設計事務所 勤務

~2012 

2014  烏野建築設計室 設立

2022~ 京都芸術大学 非常勤講師

 


受賞


2022 丹生川の家|第2回 日本建築士会連合 建築作品賞奨励賞

2022 丹生川の家|第2回 日本建築士会連合 建築作品賞U40賞

2021 湖東の家|屋根のある建築作品コンテスト2021|特別賞 U-40賞 優秀賞

2021 湖東の家|第13回関西建築家新人賞|一次審査通過 講評

2020 丹生川の家|第三回炭火・ほのおのあるくらしデザインコンテスト| 伊勢市長賞

 

MEDIA


「美」とは生命力を感じる感性で、自分が生きていくことに適した環境を人は美しいと思うそうです。

つながっていく日常の風景の中、長くそこに居たいと思える場所を作りたいと思います。

 

建築について

すむ

一日外で起こった様々なことで、人の心の中は波立ち時に濁ります。それを清らかにするよう働きかけたいと思います。たとえば、風に合わせて動く木漏れ日、水面を反射した光のゆらぎ、月明かりでできた影…自然と一体感を感じる時、心が澄んでいくよう感じます。普段見逃してしまいそうな私たちの身の回りにある小さな感動を日常の中で感じていただくことを目標としています。

いる

建築の良いところは中に入れるところだと思います。あたりまえのことのように思われるかもしれませんが、内部という同じ環境に共に身を置くことで、五感を他者と共有できることに可能性を感じます。季節や天気、様々な環境の変化は私たちの心を左右しますが、同じ場所で、今この時、一日を通して、また長い時間をかけて感動を共有することができます。

つつむ

形は中にいる人を優しく包み込むイメージがあります。人のために作る以上、これは住宅に限らないと思います。立派に見せたり、緊張させたりするような場所ではなく、受け入れられていると感じ、安心して対話できるような空間や人と人との距離をデザインしたいと考えています。

むすぶ

建築、特に住宅設計はその土地に対して、使い手の最高のフィット感を探す作業だと考えています。土地には気候風土、そこから生まれた文化や秩序があり、建物は土地の長所を魅せ、短所を吸収し、四季の移ろいに対応し、土地と人との仲をとりもちます。

なじむ

増改築や庭で新しいものを追加し、それがしばらく経って定着し、自然に見えてくることを「なじんできた」と喜びます。また、材料を施工の少し前より搬入し、環境に慣れさせ施工することを「なじませる」と言います。私たちは個々に浮いて見える状態よりも根付き調和して見えることでこれからの長い時間を越えていけると確認するのだと思います。建物が個性を保ちながらも、辺りになじみ、全体として愛されていくこと、そんな風景を作りたいと考えています。

素材について

窓を開けて気持ちよくすごしたい、ただそれだけですが、森も海も水も燃料も場所の力とバランスをとりながらつないでいきたいと思います。循環型の社会にするため、住に携わるものとしてできること。多くの構成材料からなる建築の素材について考え直しました。各素材は必要な間ある形をもって借り、時がくればまた還すという意識を持って集めていきたいと思います。

木造から検討する(できれば国産材、地域材)

循環型の管理しやすい規模のサイクルを作ろうとすると日本の場合、ベースは木だと思います。資源の少ない日本で自国で賄える建材は木しかなく、廃棄までのトータルエネルギーも木造が一番省エネです。また地下資源と違い、育てることで尽きることもありません。まずは建物の骨格となる部分で需要と供給のバランスをつかむことで、住に係る生産システムの基盤ができるのはないかと思います。もちろんその他の構造も適材適所で検討します。

既存建築物の利用

既存建築物は素材又はその集合体の一つだと考えています。今すでにあるものに対して、どうすれば最小限の工夫で自分と環境・物がいい関係を築き、快適に過ごせるかを考える。日本では人口減少で段々建物が余る予測です。省エネを目指し、再利用を進める場合、再資源化するために戻りが少ないことがよりエネルギーを使わず済みます。エコとしての既存建築物利用も、経年でしか生み出せない美しさを生かすことで新しい場所を作る可能性があると思います。

素材を大切にし、手間をかける

建築は多くの職種の手間で成り立っています。それは楽団のようで、描く図面を見て、あらゆる専門家が知恵を出し、腕を振るい、調和した空間が生まれます。生産性を追求し、人による試行錯誤の時間を削減したことで、物が氾濫しているのに満たされないことが起きているように思います。これは廃棄まで考えると不経済ですし、何より私たちの心を動かすものは人による仕事だと思います。

自然素材

仕上材には、経年変化が美しく、愛着にもつながりますので自然素材をお勧めしています。生産時の加工がシンプルで、生産から廃棄まで誰でも扱いやすい材料といえます。自然素材は不均質で、精度が作り手によって左右されますが、人の個性が残ることで、作り手が向き合った時間を感じることができ、住まい手に安心感を与えます。

石油系樹脂使用料を減らす

石油製品は作る過程でも多くCO2を排出します。新建材の多くは石油系樹脂でコーティングされていて、質感も劣りますので、日常的に触れる部分に使用することは控えたいと考えています。また日本中の建物が樹脂塗料や既製の外装材に覆われている現状の光景は美しいと思えません。素材を覆うことで、分別もしにくくなりますので、利用を減らしていきたいと考えています。

自然エネルギー

できるだけ設備なしで快適に過ごせるよう、自然エネルギーを取り入れることを心掛けています。夏は庇や緑で太陽光を遮り、風の通り道を作る。冬は温かい太陽の熱を窓から取り入れ、すきま風を防ぎ、断熱を十分にする。日中は照明なしで過ごすことをめざしています。形は、容積に対して表面積が小さいほど熱環境上は有利になることをベースに、他の条件とすりあわせています。

緑化、庭

人間がいなければ、そのうち緑が繁茂すると思います。人間の活動により環境破壊が進んでいますが、自然に還していくイメージで緑化してはどうでしょう。建築で思うような居心地の良い空間を作る労力や費用を考えると、木は一本でも辺りの印象や環境を変える力があります。舗装は熱が溜まり冷めにくく、土も呼吸できなくなるため、最低限にするようにしています。

終わりに

2011311日大きな震災が起きました。自然の警告のような。自然はコントロールできない、わかっていたのに、謙虚さを欠いてしまったのだと直観的に思いました。ただそれでも、わたしたちには、自然の強い生命力の中で、その一部として調和して生きていく力、そして、そのことを喜べる気質が備わっているように感じます。自然の構造と秩序を知り、素材が生きるよう大切に設計することにより、長く愛される建築設計に精進していきたいと思います。