湖東の家


敷地は琵琶湖東部の水郷地帯。集落内には多く自噴井戸をもつ家があり、絶えず水の音が聞こえてくる。その流れは水路で交わり、大きくなりながら、湖へ向かって流れていく。敷地は集落の南端、広大な田園地帯に面し、東には山並み、西には湖の向こうの湖西の山々も望むことができる。建主は西の景色を気に入り、湖に向かって開く計画となった。

抜群のロケーションの中でも湖の側に沈む夕日は格別のように思えた。現地の夕暮れを、西から射す直射光と湖からの明るさに加え、インナーテラスの土間からの反射光を天井でとらえることにより、夕陽と呼応する空間が作れないかと考えた。

LDK南には、美しい田園風景を望むため、横長窓が設置されている。それに加え、西の景色を望むため、インナーテラスとそれにつながる西向きの窓を用意した。インナーテラスからは外気を感じながら、直接日没を見ることができる。居間のソファからは直接太陽を見ることはなく、西から射す強い光を天井の杉板に当てながら宅内に導くことで、杉の赤みで、夕陽をより赤く染め。大きな音のあとの小さな音がより小さく聞こえるように、夕暮れの印象を強めることでそのあとの静けさがより引き立つのではないか。その静けさを感じ、明日への英気を養う時間となる 

敷地は水の豊富な地域のため、地面からの湿気を遠ざけ、また田園を少し高い位置から見下ろすことができるよう、床高を高めに設定した。一階床と地面の高低差を埋め、家と庭をつなぐ役目を南側に続くコンクリートのテラスが担っている。

建物の配置は将来北敷地の利用を考慮し、湖を望める位置まで南下させ、集落側の北敷地は半開放の広場とし、コミュニケーションの場となっている。水が豊富な反面、水はけが悪く、粘土質な敷地表土は雨水が滞留しないよう敷地を周囲より高くなるよう盛土し、地面を大きく勾配をとり、クローバーで覆った。

〇建主の要望

敷地西側の眺望を取り入れる

平屋または平屋に近い構成

縁側のような空間

南北のぬけ

インナーテラス

インナーガレージと台所への動線

小さな和室

物干と衣類収納を隣接

水廻りの清掃性

〇建築データ

設計監理/烏野建築設計室 

構造/ライン設計室

施工/建築工房中野

造園/igune庭 

所在地 /滋賀県

主要用途/専用住宅

家族構成/夫婦+子供2

竣工年/2020

規模/地上2

敷地面積/816.61

建築面積/137.02

  建蔽率15.90

    (許容60   %)

延床面積/153.20

  容積率 17.35

   (許容160  %)

構造/木造在来工法

主な外部仕上げ/

屋根-塗装ガルバリウム鋼板

   たてハゼ葺き

外壁-杉荒板OS塗装

   押し縁抑え 

建具-アルミサッシ

   木製建具  

主な内部仕上げ/

天井-杉板本実張

壁 -エマルジョンペイント塗装

床 -カバユニフローリング

   オイルフィニッシュ