丹生川の古民家

左側が北で斜面となっている 
左側が北で斜面となっている 

家具工房を営むご家族のための住宅兼家具のショールーム。また親世帯はセカンドハウスとして利用。エントランスのある東側は若世帯のスペース、建物中央のLDKを挟んで、暖かな南西に親世帯の部屋を用意し、その北側が水回りとなっている。

敷地は北が斜面の段丘上で丘下の川音、又周囲の水路から水音が聞こえ、川から風が吹いてくる。敷地には主屋、板倉、倉庫2棟が建っていて、そのうち主屋を改修する計画だった。主屋は大部分が明治期に建てられた古民家で長らく放置されたことにより、積雪のため北屋根の一部が崩落していた。

施主は、持続可能な生活を形にしたいという強い意志があり、地球に還る材料として木、土(土壁)、紙、断熱材の羊毛メインに工業製品のガラスとサッシなどの構成要素を希望していた。合板は家具職人の施主からすれば木材に認められなかった。ただ、ご要望をかなえたとき、通常の方法では希望の予算に収められるようには思わなかった。幸い施主は木工のプロであり、家具工房のショールームにもなるこの家を、彼らが施工することで、家具からはじまり、家の細部まで久米製作所の家具のイメージで満たすことができるのではないかと考えた。又、施主が気に入った建物の骨格・北に開けた景色は活かさない手はないと思った。改修の場合、何か異物を投入し、その新旧の対比を愉しみながら新しく構築していく方法もあるが、今回の場合は、施主のスキル・好みを考えると、古いものを残しつつ、新旧を織り込んでいくことが最適に思えた。

外部は耐久性が求められるため、真壁(構造材が露出)から大壁に変更し、古い構造材を仕上げ材で覆い守り、内部は力強い構造材を見せる意匠にしている。修復や補強した材は、内部では無塗装メインとし、時間や出来事の経過をそのまま表現している。構造は事前に耐震改修が済んでいたが、一部壁の追加や材寸のアップの対処をした。断熱性は新設壁には羊毛を充填、一部土壁部分は内側にボード状断熱材を貼りこんだ。気密性は外壁沿いを防風材で覆い対応した。開口部の多い南西部は、外部から直に居室とせず、既存の縁側を残し、分厚い空気の断熱層と考えている。家具・建具や飾り棚などの造作は施主が担当し、材は彼らの作る家具と合わせ、山桜材・真鍮をメインとし、材寸も繊細な作品に合わせ、細めの材を組み合わせて統一を図った。設計当初から施工者が関わり、古材に対しての施工方法の検討、土も含め材料調達、木の意匠材の効率化などの協力を得れたこと、また施主のスキルにより成し遂げられたように思う。

夏は川から風を通し、寒い冬の熱源は家具工房から出る端材が薪ストーブの熱源に代わっていく。また給湯設備も薪ボイラーを利用。家の中心にある大きな薪ストーブに火が灯ると、建物が息を吹き返した。 


設計/烏野建築設計室 

施工、設計協力/丸設計室

        (有)丸翔アルミ建材

家具・建具・外構/久米製作所

(一部木造作・左官)

所在地/岐阜県

主要用途/専用住宅

家族構成/夫婦+子供2

竣工年/2018

規模/平屋建一部ロフト 

構造/木造在来工法

敷地面積/2361㎡(715.45坪)

建築面積/182.28㎡(55.23坪)

延床面積/153.06㎡(46.38坪)

主な外部仕上げ/

  屋根-塗装ガルバリウム鋼板

     横葺き

外壁-杉荒板南京下見板張

軒天-杉化粧野地板

建具-木製建具

   アルミサッシ     

主な内部仕上げ/

天井-杉板本実張

壁 -土塗壁

   中塗り仕上げ

床 -杉厚板

   浮造り加工本実張 


第三回炭火・ほのおのあるくらし 

デザインコンテスト 伊勢市長賞 受賞



施工前