建築撮影の下見に久々スキップ町家。気づけば、竣工後4年が経っていました。
かわいい苗木だったエントランスの紅葉。伸びてる、元気よく伸びてる。。
造園屋さんに手入れに入っていただくことに。
スキップ町家の一年点検にお伺いしました。
竣工した物件は手塩にかけた娘を嫁に出したあとみたいなものなのでしょうか、
いざ引き渡してしまうと、なかなかお邪魔する機会もなくなってしまって、一年点検は久々に会える嬉しさと、連絡がなかったのはよろしくやっていたからのはずだけど‥というちょっとした不安とが入り混じります。
一通りチェックして、大きな問題もなくほっとしました。
木造の建物は最初の1・2年は特に木の乾燥等により動きがあり、材料の取り合い部分に、
隙間が出てきやすい時期になります。主にその隙間を埋める対処をすることになりました。
その帰りに、建主からいただいたチケットで二条城で開催中のアジア回廊現代美術展へ。
作品には作家さんがその場所に受けたイメージが反映されていて、掛け合いが面白かったです。
私が好きだったのはこの作品。場所のリズムにユーモアを加えたセンス、が好きでした。
待ちに待った写真撮影!
お天気は・・・曇りのち晴れ!良かった!
西内壁面がどうしても午前中の方がきれいに撮れる気がして、
午前中からの集合をお願いし、久々に柿本町の町屋にお邪魔しました。
写真家の田中和人さんに撮っていただきました。
さて、最後の画竜点睛。
玄関扉脇の幅38㎝、奥行1mほどの植栽スペース。
小雨の中、朝から造園屋さんと待ち合わせ。今回は桜花園にお願いしました。
少し早く着いてしまったので、犬走りの石をもう一度洗い出していると、造園屋さん到着。
軽トラのカバーをとると中にはたくさんのかわいい植物が。
それだけでワクワクしてしまいますよね。
現場で合わせてみようと、かなりたくさんめの植物を持ってきて下さいました。
朝から続いた必死のラストスパート。
最後にソファも届き、ゴールイン!!
実質4か月半ほどの工期でしたが、すばらしい奮闘ぶりで
何とか間に合わせて下さいました。
おつかれさまでした、本当にありがとうございます。
(4か月半というと一般的に言うと、短くないかもしれませんが、
設計事務所の仕事というのは、全体的に特注的な要素も多く、
注文が細かいこともあり、どうしても半年くらいかかることが多いのです。)
そんな様子を見ながら、ご主人が
「一年前、新築・リノベーション・マンション等も含め、散々探して、良いと思えるものに出会えず、
大きな金額をかける気になれなかった。けれど今出来上がったものを見て、
これならこの金額を出しても惜しくないと思えます。」と話してくださいました。
建主が踏みとどまって、私に連絡を下さったことから、始まったのですが、
高級なピカピカなものではなく、自由で楽しいもの。
シンプルなもの。
時の経過によって一層美しくなるもの。
が一緒に目指すものでした。
初めてメールをいただいた時にそんなご希望と自分の目指すものがぴったりと合っていて、
びっくりしたのを憶えています。
あとはシンプルないくつかのキーワードをもとにここまで形になったのですが、
お気に入りにできたでしょうか。
学生時代、建築は自然破壊的な行為なんじゃないかと悩んだのですが、
とにかくなんとか永く愛せるものを作って長く使ってもらう、それにより資源消費のサイクルをゆっくりにすれば、
継続可能になるんじゃないかというのが今のところ、私の行き当った回答です。
長く使えれば、お財布にもやさしくなるはずなのですが。
つけたての北窓のスクリーンが日没後のきれいな青に染まり、
それがきれいで、この家には毎日こういう夕方が来るんだなぁと
なんだかもうクタクタの体に、その青が染みこんでいくようでした。
そのあとはお引渡しを済ませ、ほとんど燃えカスの母(私)が子供たちをお迎えに行くのでした。
また資料がそろいましたら、Web内覧会を開催したいと思います。
建築工事はおしまい。
おまけ。お引越し後。
お引渡し前日。
どうしても見てもらいたい人を、お迎えに。
玄関を開けるとまず階段が正面に見えるのですが、「登りたい~!!」と大興奮。
かなり気合いを入れて取り組んだ階段でしたが、構造となる鉄骨部分がなかなかうまくいった分、
その手摺の木の部分が必要だったか、施工で難しいことを要求していたこともあり、
自分の判断が正しいのか途中迷いがありました。
階段の手すりは全体のスキップでつながっていく空間をしっかりとそしてやさしくリードしてくれるような
ものにしたいというイメージがあり、それには空間に馴染んでしまう白い鉄骨では弱く、しかも上へ上へリードしてくれるものは、
温かみあるものが良いという判断で、赤いブビンガという木を選びました。
木工事は基本的には難しいところをなんでもないように見せるところに美学がある感じなのですが、
ここは一番最初から大工さんの腕に頼るかっこいいところみせちゃって下さいのような
フリの部分でしたので、うまくいくか心配でしたが、きれいにおさめて下さいました。
そんな経緯もあり、娘のこの言葉にうまくいったかなと思いました。
設計段階からどうしようか迷っていたエントランスである犬走りの仕上げ。
施主はいかにも和風みたいなものはあまりお好みでないような気がして、
かつコストも抑えたい。
でも、モルタルの金鏝だとあまりにも味気ないし、なんか滑りそう。
これでいいやと思うものはどうやら金鏝が年月が経ち、自然に洗いだされて、
ザラザラしてるようだし‥
そんなままいよいよ仕上げ工事が近づいてくる頃、
街中でいい感じの仕上げ発見!
見かけたものは、ザラッとしたモルタル仕上げに3分程度の黒っぽい石が
散らされていて、その石の小ささのためか、なんだか石の部分が
大事そうに願い事をしているみたいに見えました。
石がないと一面なのですが、石を入れると石と面が分離して、石が浮いて見え、
よし、これをお手本にさせてもらおう。
いよいよ施工日は左官屋さんと朝から待ち合わせ。
まだ泥のモルタルに石を配置してみながら細かい仕上げの希望を相談します。
前日色々スタディし、結局ほぼランダムで良いなと思ったのですが、
このランダムというのはなかなか作り手には難しいところ。
縦と横のおおまかなピッチを決め配置していくことに。
一か所一か所入魂で小さな石1~3ずつというルールをもとにを左官屋さんの感性で、
配置してくださいました。
私もじっと見ていたのですが、次はここかなぁと思った位置がぴったりあったりすると、
「やっぱりそうきましたか。」という感じでおもしろかったです。
「もうちょっと揺らして下さい。」みたいな抽象的な要望にもびしっと答えて下さいました。
あまりの真剣さにこの真剣さがお手本を見たときの願い事をしてるみたいと感じたことに
繋がっていくのかなと思いました。
一通り石を並べ、あとはスポンジでふき取りながら、荒せば出来上がり。
OF作業日までの作業を何とか方をつけた先週。
そして、またピーーーッと鳴り、後半戦。
とにかく限られた時間の中、残された作業をこなそうと、
追い込みの作業が続きます。
何か手伝えないかと思うのですが、かえって足手まといですし、
ただ見守るしかなく、設計者は(スパイクを)決めることはできないんだなぁと
改めて思いました。
設計中にここはバシッと決めてほしい、これで決まるか、
ちょっとコースが難しい?でも決まるならこっちの方が良いよね。
みたいなことを考えていて、現場でそれが実現されていきます。
そのさじ加減を考える、そしてスパイカー(大工さんや職人さん)が一番良い感じで
スパイクが打てるようトスをあげなくてはと心得ながら描かなければならないのですが、
その心遣いが不十分だったりするとやっぱりうまくいかず反省したり。
だいぶ前にあげたトスがどう打たれるか、「決めてくれー!」と願いながら
ただただ手に汗にぎるのでした。
お引渡し前にお施主さんによるOF(オイル塗装)作業があるということで、
その前日は床養生をはがす前にやっておきたいあれこれをしに、
現場にはあらゆる職人さんがみえて大賑わい。
仕上げ工事に先立って、建主と仕上げのお打ち合わせをしました。
仕上げの選び方はどちらかというと自然素材系が多いと思います。
特に極端な自然主義なつもりはないのですが、気持ち良さそうなもの、
時間が経過しても美しく見えそうなものという観点でそのあたりに落ちついていくように思います。
実施設計の段階でおおよそ素材は決めておき、
さて、その色や仕様はどうしょうかというご相談をします。
具体的にどんなものがあるかというと・・・
外壁の色・内壁の色・床の色・タイルの色・障子紙・ふすま紙・ソファ生地・衛生器機の色・ロールスクリーンなどなど。
まずサンプル帳の中から良さそうなものをピックアップ。
サンプル帳に貼りこんである現物サンプルは小さいので、
もう少し検討しやすいA4サイズ程度のものをメーカーより取り寄せます。
それを持って、おおよそ私の方で現場や自然光の下で色を見た上で、良さそうなものをご提案します。
そして、今回はざくっとこんな色味に決まりました!
ガサガサガサ。
夫「ちょっと何してんの?」
私「いや、その、ちょっと製図板を出そうと・・」
夫「今回CADで描いたんちゃうの?」
私「そやねんけどな・・」
真冬の一こま。
「家に入ってすぐは、ハレの場にしたい。」
建主のその言葉にグーンとハードルを上げて、初めての鉄骨階段に挑戦。
決めたものの、鉄はあまり使い慣れてなかったので、
「うーん・・・」
お施主さんに「図面まだですかー」と言われるなか、考えること丸三日。
結局、しっくりこないまま見積もりをとり、工務店が決まるすぐに、
「知恵をかして下さい!」とお願いし、いろいろ鉄骨階段のことを教えてもらい・・
真冬寝込みながら考え、図面提出。
そこからさらに業者さんに施工図を描いてもらい、、ようやくここまでできました!ありがとうございます!
工務店さんからは当初からスキップフロアだから職人さんが働きやすいよう、
早めに設置してあげたいと言われていたのに、結局長くご不便かけてしまったのですが、
まだ骨だけの鉄骨階段に仮の段板がとりつくと、「こりゃ楽になったわ。」と
動脈硬化が治ったみたいに、皆さんスムーズに動かれるようになりました。
私はというと、自分の中でとてもハードルが上がっていたので、
なかなかうまくいっていて、安心しました。
どれくらい嬉しかったかというと、パソコンの壁紙にしたいくらいですかね。(嬉しがり)
まだまだ出来上がってないんですけど。
こんな気持ちの時があるから、続けてしまうんですかね。
さて、しばらくコツコツ冷たい手摺をさわり、いよいよ仕上げの色合わせ。
今週ようやく中間検査が完了しました。
中間検査とは、主に構造の法定検査なのですが、木造2階建ての場合は、
建方後、屋根の野地板を敷き、構造材の取り合いに金物がついた段階で検査員に来ていただいて行います。
通常、建方から1~2週間後くらいには受けていると思うのですが、今回は東西隣地と距離がないため、
外側から順番に仕上げていく必要がありました。東西の外壁は全て部屋内からの作業。
細い隙間に手を入れながら、下から防水紙、胴縁、サイディングを少しずつ張り進め外壁完成。
そこから、内側に耐力壁を作って、ようやく検査を受けられる状態になりました。
ここまで込み入った場所での現場ははじめてだったので、なるほどこういう順番になるのかと勉強になりました。
さて、今の現場はこんな感じ。
2016年2月12日(大安) 建方を行いました。
微妙なクレーン操作のもと、大工さんたちが手際良く組んで下さって3時の休憩までにはほとんど出来ていました。早い!
何度も何度も自分がきちんとイメージし、それを反映できているか、確認しているのですが、それでも構造が組上がるまで、なんとなく落ち着かず、自分の提案で良かったのか心配でしたが、ようやく組上がった構造を見て、ホッとしました。
働き始めた頃、大工の棟梁に構造が組上がった時点で、その建物が大体良くなるかわかると言われたことがありますが、形態として、その土地の特性と建主の要望をまとめ、自分なりにはうまく回答できたかなと思いました。
次の日、現場へ行くとご近所の方も興味津々。
「あそこはどうなってんの?」「なるほど~」と話しかけて下さいました。
そんなご近所の方にも見守っていただきながら、工事は進んでいきます。
着工すると、早速プレカットのチェックが始まります。
プレカットというのは、木構造材を一機に工場で刻んでしまうというものです。
私が就職した10数年前はまだ移行期で、手刻みじゃないと大工さんが愛着が持てないんじゃないかとか
プレカット工場には最新式の機械を導入しているものの、担当者の数値の入力ミスなどで、大失敗!なんてこともありました。
そんな移行期をのりこえて、今はほとんどプレカットです。
早く、しかもコストも抑えられるというメリットがあるのですが、GOを出すと本当に一機にいってしまうので、
何度何度も見直し、監督さん、プレカット担当者と共に二重三重にチェックし、
よし!いけるよね?いける!という感じでお願いします。
今回はスキップフロアで少し構造が複雑だったので、頭の中で組み立てながら入念にチェック。
基礎工事は石や砕石で地面を占め固め、
その上に地面からの湿気防止に防湿シートを敷きます。
それをコンクリートで押さえ、その上に基礎の鉄筋を組んでいきます。
いよいよ組みあがったということで、配筋検査へ。
配筋検査とはコンクリートに打ち込む鉄筋の量などを図面通りにできているか確認します。
今回はこの規模にもかかわらず、面積や立ち上がりの状況によって、
様々な組み方の指示だったので、各オーダーに応じて細かくチェックしました。
地鎮祭を行いました。
地鎮祭ってご存知ですか?トコシズメノマツリとも言われるようです。
その土地の神様を鎮め、土地を利用させてもらうことの許しを得るためのお祭りで着工前に行います。
この地鎮祭が結構おもしろいのですが、まず、4本の青竹を敷地に立て、その間を縄で囲います。
この内側がお祭りの場となるわけですが、こんな簡素な造りにもかかわらず、神主さんが「モ~~~」と神様を呼ばれると、
一機にその場所が外からは何者も入れないような空気に変容します。
神主さんが土地を清め、設計・施主・施工が力を合わせ「えいっ!えいっ!えいっ!」と鎮め物をします。
玉串奉奠をし、きれいな鈴の音を聞くと、本当に身も心もきれいになった気になるのです。
最近は家から神棚も無くなり、家の中で神様を感じる場所は無くなってきていますが、地鎮祭をすると、昔からの日本の文化、
かなりワイルドな時代からの文化に触れる気がします。ぜひ、機会ありましたら、感じてみてください。
当の私はあれこれご挨拶も考えていたのに、緊張してすっとんでしまい、お祝いのことばしか出てきませんでしたが、
この土地は売主が売りに出して、3日後に私が見つけ、まだ一度しかお会いしたことのなかった建主にご紹介したところ、
気に入って下さった土地。不思議ととんとん拍子に進み、その場に立っていたというような、ご縁としか思えないように
繋がっていった土地なので、神様も歓迎してくれているのではと思っています。
ここで一同ピリッと清めてもらい、いざ着工へ!
帯を締め直し背筋を伸ばしました。
できたー!ようやく工務店さんにお見積りを依頼。
大体45坪くらいまでの規模の住宅の場合、早くて2週間~工務店の状況によって1月ほどかかります。
その間、建築確認申請をしたり、施工図を描いたり、進めていくのですが、
とにかく緊張の糸が張りつめて、「結構締めたつもりだったけど、まだまだだったなぁ」
とあれこれ頭によぎります。待つこと3週間。工務店さんからのお見積りが上がってきて・・・
ここは出来ればあってほしくはないのですが、一つの山場。
まず、電卓をパチパチパチパチたたきながら、項目の抜けがないか、数量はあっているか、
余分に見すぎていないかなどを査定。
それから、本当に自分たちに必要なものは何かのVE案の選択を迫られます。
今回は建主がここは思いきって出そう!と思って下さったことと、工務店さんの太っ腹な計らいで
意外にスムーズにおさまっていきました。ありがとうございます!
そして、いよいよ工事契約へ。
土地の決済が済んだと建主から連絡があり、早速地盤調査を行いました。
スキップフロアのプランということもあり、構造設計事務所にも協力していただいて
いるのですが、場所を伝えると、「堀川通りの近くは堀川の堆積で地盤ができていて、
3mほどは地盤が良くないことが多い。」と近くの敷地の地盤データを見せて下さいました。
そんこともあり、改良が必要になるとある程度覚悟していました。
今回3軒同時の建て替えなのですが、そういえば、先に着工した隣地はどうだったんだろうと
聞いてみると、改良なしでいけそうなくらいの結果だったのこと。
密かな期待を持ち、小雨の中調査開始。
木造の住宅の場合、簡易な調査のスウェーデンサウンデンィング式という
おもりをのせながら、グルグルと棒を回転させていき、その回転数と
貫入量の関係によって、どの程度土が締まっているか調べる方法が一般的です。
それを大体家の4隅と中央の5ポイント調査します。
1ポイント、2ポイント、3ポイント・・おっ!これはもしかしたら!
セーフセーフ!改良なしでいけそうな結果!
小雨も吹き飛び、明日もホームランだ!的なホクホクとした気持ちで思わず、
お調子に乗ってしまう私でした。
厳しいコスト調整が予想される中、50万円の貯金。チャリンと音が聞こえました。
この物件の前のお話は「実施設計お打合せ(柿本町の町屋)」へ。
実施設計のお打合せをしました。
実施設計とは基本設計の内容に基づき、工事見積もりをしていただくための設計になります。
主に建主には展開図という部屋の内観立面図で、各部屋の壁にどういったものがとりついてくるかを
見ていただきます。ここまでくると、かなり具体的に部屋のイメージができるようになります。
この家は居間に大きめの開口をとり、居間とテラスがある程度一体に使えるようというのが目玉の一つなのですが、
模型を作った上で、その2部屋の間はアルミサッシでは一旦切れてしまうような気がして、木製建具で提案しました。
提案ではコスト的なこともあり、半解放に抑えていたのですが、
いやいやここは重要なところ。フルオープンにできるようにしようということになりました。
若干コスト的なことが心配でなりませんが、建主とこんなにコンセプトが共有できていただんだと
とても心強い想いがしました。
日常、一人で考えこんでいる内容がこうして誰かと共有できるとき、その内容にさらにエネルギーがふきこまれるように
感じます。
実施設計をしております。
おチビちゃんたちと一緒に早く寝てしまっていることが多いので、
早起きし、少しプランを考え、涼しい間に出勤し、メールをチェック。
そこからは、図面の中とこちらを行ったり来たりしながら、気づけば日が暮れているような日々です。
「柿本町の町屋」の実況中継として何かブログアップしたいなぁと思っているのですが、
実施設計の仕事はなかなか地味なもので、色々な要素を忍耐強く摺合せおさめていきます。
実施設計は基本設計で決まった方針に基づき、施工者が見積りをするため図面を作成します。
一般的な住宅で30枚くらいの図面になります。
その中でもまず、矩計図というものを構造図と並行しながら進めていきます。
これは、断面詳細図で、一枚に構造、仕上げ、開口部高さ・おさまり、空気の流れなど
全て描きこまれ、この図面と平面図があれば、その建物の構成がほとんどわかるという
スペシャルな図面です。
ここからはみちみちと展開図(部屋の内観立面図)に入っていきます。
今年はしっかり梅雨だなぁと思ってましたが、久々の梅雨の晴れ間。
晴れるとすっかり夏がきていることに気づきます。
先日、柿本町の町屋の建主と基本設計の打ち合わせをしました。
基本設計とは、その建物の方針・骨格を決める段階です。
企画設計で気に入っていただいたプランをより精密に
法規性・構造・仕上げ材のおおよそのイメージ等をつめていきます。
当事務所では
平面図 縮尺1:100
断面図 縮尺1:100
模型
等で現段階での設計内容を建主と共有しています。
今回は模型を1/50の縮尺で作成し、内部の構成も見ていただきました。
建坪12.5坪、間口2間半にいかに暮らすかというテーマでした。
あれこれ考えたのですが、動線面積を節約するには階段と廊下を兼ねれば
良いんじゃないかということで、半階ずつ上がるスキップフロアの案に決まりました。
2階の南側に居間があり、広めにとった半屋外的なテラスと一体に使ってもらえるよう
お作りしたいなと考えております。
企画設計の段階で階段の上に細い直射日光を入れたらきれいなんじゃないかという理由で
天窓をとっていたのですが、模型で検討した結果、南北の窓に集中した方が良さそう、
メンテが心配ということで、中止になりました。
テラスの腰壁の高さが要検討事項となりました。街中なので目隠しした方が良いけれど、
あまり高くするとうっとおしい気もするし・・ということで悩んでおります。
やはり模型を作るとより具体的にイメージできます。
そんなことを共有し、いよいよ実施設計です。
ここまで都市型な住宅の設計は初めてです。
道路に対してあまり圧迫感を出したくないなぁ、やっぱり平入り(軒先側から入る入り方)?
とはいえ限られた面積の中で、広く使いたいし・・などなどの思いから外形ができてきました。
階数は2階建て。これはコスト的なこともあるのですが、3階建てになると防災上の規制が厳しくなってくることもあり、
ご要望が納まるのであれば2階建てに抑えたいところです。
街中に住むといろいろなものを共有できて、便利な反面、自分だけのというのがなかなか難しいのも事実。
それでもただ家の中に籠るだけでなく、外気を感じれる場所が欲しくて、南側に面積の許す限りですが、
少し広めにテラスをとることにしました。
開口部からどんなものが見えるだろうと確認。
目は合いあたくないなぁ、お隣のお庭がここにあるなぁ、見たら嫌かなぁ、
この辺のお空いただきますか・・・
そんなことを地図と現場写真から検討します。
郊外だと、基本は自分の敷地内で完結できそうなのですが、
建てこんだ街では家の周囲の空間をみんなで共有して成り立っています。
そんな作業をしていると、既成の街中に新築するというのは、
本当に縫い込むような作業なんだなぁと思いました。
京都の街中は巨大な集合住宅のようです。
この物件の前のお話は「敷地発見!」へ。